森川教授プロフィール

  • 森川友義(もりかわ・とものり)
    早稲田大学国際教養学部教授。政治学博士(Ph.D)。 1955年12月21日、群馬県生まれ。 早稲田大学政治経済学部政治学科卒、ボストン大学政治学部修士号、オレゴン大学政治学部博士号取得。国連開発計画(UNDP)、国際農業開発基金(IFAD)等の国連専門機関に勤務。アイダホ州立ルイス・クラーク大学助教授、オレゴン大学客員准教授を経て、現職に至る。2001年から2005年東京医科歯科大学非常勤講師。海外生活は米国、イタリア、ウガンダ等約20年。専門分野は進化政治学、国際関係論、日本政治。

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社長室ブログ

2009年6月10日 (水)

森川先生の政治リテラシー講座『若者は、選挙に行かないせいで4000万円も損してる!?』読者モニター大募集!

533『マジビジ政治リテラシー講座』が本になりました!

『若者は、選挙に行かないせいで4000万円も損してる!? 35歳くらいまでの政治リテラシー講座』。(7/7発売予定)

連載時からのファンで、一刻も早く読みたい!と言う声にもお応えし! 発売にさきがけ、本書を読んで、感想を書いてくださる読者モニターを30名大募集いたします!

まだお店にも並んでいない本が誰よりも早く読めるチャンス!
ぜひこの機会にご応募ください。

応募方法は以下の通りです。
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1.こちらのフォームから、モニタープレゼントにご応募ください。
応募期間:6月10日(水)~6月22日(月)

2.当選者さまに、『若者は、選挙に行かないせいで4000万円も損してる!? 35歳くらいまでの政治リテラシー講座』をお届けします。

3.感想をお送りください。
ブログをお持ちの方は、感想を書いた記事をアップし、トラックバックにてお知らせいただきます。ブログをお持ちでない方は、400文字~800文字の感想をメールでお送りいただきます。なお、感想の一部は、POPや広告などに匿名で使用させていただくことがあります。

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著者の森川先生は、日経ビジネスオンラインでも連載中!
「進化政治学」で選挙が見える

「政治と浮気は同じメカニズム」
「合理的に考えれば投票はしない」など、
面白く、かつ、ためになる内容を読むことができます。
あわせてお楽しみください。

2009年3月26日 (木)

最終回 日本の未来を担うMAJIBIJI世代のみなさんへ!

日本はこのままでいいの?やるべき課題は山積みだ!

さて、今回でいよいよこのブログも最終回です。

今まで、各論として、
世界における日本経済
世界における日本の防衛問題、

900
兆円を超える財政赤字、食料とエネルギーの海外依存体質4点について解説しました。

どの項目でもキーワードは「依存」でしたね。
天然資源や食料やエネルギー資源に乏しい日本としては、
海外から安価に輸入しないことには国家が存続できない仕組みになっています。


他国・他人に依存するということは、その分だけ不安定になります。
その分だけ弱腰になります。
言いなりになってしまいます。
残念ながら、現在の日本の外交、そのような弱腰外交です。


このままで良いわけがありません。
しかし、海外に対してわが国の意見を毅然として言うためには、
しっかりした国民の支持が必要です。

総理大臣が脆弱な支持基盤しかなかったり、
数ヶ月で辞めてしまうような状況では、首尾一貫した政策を取るのが難しいです。
官僚に任せておくと、うまく行かなくなると責任逃れをしてしまいますから、
国会議員と国会議員が選出する総理大臣が責任をもってこの国の舵取りをしてゆかなければならないです。


その意味でやらなければならないことは山積みです。


たとえば、現在の不景気、どのような処方箋で対処すべきなのでしょうか。
旧態依然とした予算のばら撒き型で良いのでしょうか?
通年以上の予算を使うということは、財政赤字が増大するということです。

GDP
150%以上の財政赤字がある現在(日本国民が1年半無給で働いてやっと返せるということ)、更に赤字を増やすことは正しい行為なのでしょうか。
あるいは日本の経済。

20世紀の経済成長モデルが21世紀に入って機能しなくなっていますが、
どのようなシステムを構築することが良いのでしょうか。


更には、日本の領土の防衛です。
日米安保条約は国防の基本ですが、このままで良いのでしょうか。
東京都という首都の中に他の国の軍事基地があることは異常事態です。

青森県の三沢基地には、エシェロンというスパイシステムまで存在して、
私たちの秘密はないに等しい状態になっています。

こんな形で日本を守ること、正しい姿なのでしょうか。


最後に食料とエネルギーの海外依存は非常に高いものがあります。
政治の力によって、自給率はどのようにも変えることが可能です。
食料自給率
40%、エネルギー自給率4%、
このレベルの自給率で良いと思っていらっしゃいますか?


このような難問、究極的には、
私たち一人一人が考えていかなければならないのです。
あくまでも代議士は、日本国民の代表なわけですから、
意見を出すのは私たち有権者です。
答えは出ないかもしれないし、答えは全員一致でもないかもしれません。
でもこれらの難問に答えを出そうと考えることは、
政治を考える上で、重要な第二歩目になります(第一歩は投票所に行くことでした)。


その考えの手助けにこのブログがなれば有り難いと願っています。


日本再生の肝となる「教育問題」だって見過ごせない!

日本に唯一あるのが、人的資源です。
戦後ずっと、安価な割には優秀な労働力が存在していました。
日本の教育は、教える側にもプロ意識がありましたし、
教えられる側にも受験競争という形で、競争力が養われていました。


ところが
21世紀では、この前提が大きく揺らいでいます。
「世界における日本経済」のところで述べましたが、
日本の教育レベルは下降の一途をたどっています。

   図表4 PISA学力テスト結果

794

図表4が過去3回(2000年から3年おきに実施した結果)の3つのカテゴリーにおける結果ですが、どの分野でも落ち込みが激しいです。
特に数学的リテラシーは日本が誇りにしていた分野、もはや見る影もありません。「ゆとり教育」という名のものと日本の唯一の貴重な財産を劣化させてしまいました。


グローバル化は更に進み、
世界の人たちと競争しなければならない状況において、
日本の教育レベルが低下するのは、由々しき問題です。


日本が江戸時代のように鎖国して、日米安保条約を破棄して、
日本人だけが、国産の食料だけを消費して、
エネルギー自給率を
100%にして生きてゆこうとするならば、教育レベルが高かろうが低かろうが、日本人の間だけの競争なので、問題ないかもしれません。

しかし、世界の動きはまったく逆。
むしろ、国境は無くなる方向で、
財やサービスのみならず、
人間も国境を越えて行き来する時代
です。

食料獲得手段である仕事もこれから日本から海外へ、
海外から日本へと柔軟にシフトしてゆくことは不可避です。
(ちなみに異性獲得の「恋愛」も同じ傾向です!)
そこで、本来なら、自分に合った仕事を求めて世界中どこにでも行けるような人材になる、というのが基本的な考え方であるべきです。


ところが、日本の教育、ひいては人材の育成方法は、
このグローバル化の傾向とはさまざまな意味で異なっています。
教育内容は劣化してしまいました。

人口が減少することで大学受験は容易になり、競争意識も低下してきました
他方、「読み書き算盤」の基本的技能、
プレゼン力が求められる時代にあって、日本の教育の基本は知識の詰め込み、
つまり暗記です。
ある程度の暗記は不可欠ですが、世界の傾向としては、
知識がどこかにあるもの、その知識にアクセスする能力があれば充分、
それより散在する知識を統合し論理的に考える力、
知識を用いて相手を説得する力というのが不可欠という考え方になりつつあるようです。


教育こそ、日本が将来にわたって世界に強力なプレゼンスをもたらす原動力になるものです。
世界の子供たちとの競争という側面を意識した教育改革が求められています。
競争の激化、不可避なのです。



日本の将来のために、政治ができること

このような世界レベルでの見方、将来への展望、教育改革は、すべて政治の役割です。
日本を巨視的に見て、改革する、これは私たち有権者には出来ません。
力もないし、知識もありません。
日本の国政レベルの指導者が行うべきものです。


指導者は誰か? 
本来は政治家です。

私たちが一票を投じて選出した代議士です。
国家試験に合格して、省庁から雇われた官僚では決してありません。


この点をもっと明確にしてゆき、代議士に力を与えてゆくのが(もちろん同時に代議士の責任は大きくなります)、日本の民主主義のあるべき姿だと思います。



「政治」ってつまりは不良のケンカ!?こう考えれば、政治が
もっと見えてくる!



最後にあとがき。
このブログは、ディスカヴァー21社の干場弓子社長のご好意で始めることができました。感謝申し上げたいと思っています。
社長室の田中さん、長い間、有難うございました。
彼女が原稿をブログ用に直して下さいました。

このブログの内容は、早稲田大学国際教養学部で「公共選択理論と日本政治」という英語で行っている講義を基にして作成しました。

基本的に用いた政治学の手法は、合理的選択理論(
Rational Choice Theory
あるいは公共選択理論(
Public Choice Theoryと呼ばれているもので、
政治学の分野では
1950年代に誕生し1980年代に隆盛して、
現在では政治学者はこの理論を習得せずして学者になることが困難になっているほど、ポピュラーなアプローチです。


合理的選択理論の根本的考え方は
私たちホモサピエンスは原則的に利己的である
という前提条件を受け入れることから始まります。


20
数万年前に誕生したホモサピエンス(ヒト)は、長い年月をかけて、
地球上に勢力を拡大して、現在では
66億人が居住しています。
私たちの間では限りある資源(食料と異性)を求めて生存競争を行っています。
狩猟採集時代では「腕ずく」で資源を奪い合ったのですが、
定住して農耕社会が出来始めると富の蓄積が可能となり、
敵対者に勝つには腕力のほかに知力や指導力も必要になってきました。


現在の私たちもこの延長線上にいます。
私たちの行動は遺伝的な衝動と、後天的な経験によってもたらされた行動との両者のスイッチを適宜入れながら、行動していると言えます。
でも基本的には私たちは「利己的」です。
自己利益を追求することによって、経済・ビジネスは成り立っていますし、
政治の世界もほとんど変わりがないことはこの講義全体を通じて述べてきたことです。


このようなアプローチは、中学校や高校で学んだ「政治学」とは大きく異なっていることでしょう。
中学や高校の教科書は、「こうあるべき」という原則論ですからね。
しかし、政治の世界を見るためには「利己的な遺伝子」を前提にした手法が最も有効です。
「政治はこうあるべき」、「民主主義はこうあるべき」という見方では、現実の日本政治が見えてきません。

私たち有権者も、政治家も、官僚も全員、
赤ちゃんや幼稚園児のように我がまま、という前提で見た方が、政治が分かる。

なんかやるせない気持ちになってしまいますが…。


まあ、それが日本の政治の基本です。
政治とは、幼稚園児のおもちゃの奪い合い、高校生の不良の喧嘩、
企業の社員間の社長の椅子取りゲーム、
さらには団体スポーツの勝ち負けとさほど変わらないもの

というふうに考えて差し支えないです。
競争のルールが異なるだけなのです。


以上です!

2009年3月24日 (火)

第79回 若者よ、選挙にいかないままでいいの?

選挙を棄権する若者層は、断然損をしている!

このブログは、MAJIBIJI世代の人たちの読者に政治の重要性を喚起するために書きました。なぜなら、20歳代、30歳代の政治的関心は薄く、
政治的に多大な損を被っているからです。


関心の薄さは投票率に如実に表れています。
図表2は2005年の総選挙のデータを用いて世代間の投票率の違いを示しています。

図表2 世代間投票率の違い
(2005年選挙、総務省調べ)
792

図表2の通り、最も投票所に行く人たちは65歳~69歳の有権者です。
次に60歳~65歳と70歳~74歳の有権者、
つまり、定年間際か定年を迎えて年金生活に入っている人々が投票するのです。

他方、20歳~24歳、続いて25歳~29歳、
更には30歳代前半の有権者は選挙では棄権をする場合が多い
明らかに投票に際して世代間の違いがあります

このような状況は、選挙において政党の訴えかける政策に影響を与えています。
候補者は、選挙に行って投票してくれるか分からない人々にアピールするような政策を提言するより、確実に投票してくれる人々(65歳~69歳前後の有権者)に訴えかける政策の方が断然有利と考えます。当たり前ですね。

ですから、選挙や選挙後の政策にあたっては、
年金問題とか介護問題が重要な政策課題として取り上げられますし、
多少の(?)借金をしてまでも、
景気を回復させようとすることになり、

その借金が積もり積もって900兆円になってしまって
二進も三進も行かなくなっているのが日本の財政状況です。

図表3のデータを見ると、皆さん、愕然とするのではないでしょうか。
20歳代から60歳代までの世代間において、
政府の政策によってどのくらい世代間格差が出ているのかという試算です。

このデータがもとになっているのは2003年時での年齢ですので、
図表の中の年齢と現在の皆さんの年齢の間には若干の開きがあるかとは思いますが、
10年ごとの受益額で見た場合、

60歳以上の人々が、

若い20歳代や30歳代の人々を犠牲にして政策を行っている


ことがよく見てとれます。

60歳代の人々は生涯において6千万円くらい政府から、
払った税金以上の受給を受けています。


当然国民は全員税金を払っていますが、
50歳以上の人たちはそれ以上に政策や予算という形でお金を受給しているのです。

他方、20歳代の人々は、税金を払いますが、見返りがあまりなくて、
2千万円近く損をする勘定になります。

お年寄りに優遇し、若者に冷たい予算になっているということです。

図表3 世代間の受益格差
(内閣府 財政経済白書)

793

当然といえば、当然なのです。

MAJIBIJI世代の人々は比較論で言えば、
圧倒的に選挙には行かず棄権しているわけですから、

その人たちのためになる政策を打ち出しても政治家は得にならないです。

たとえば、候補者が、「若者を活かすまちづくり」と訴えるよりも、
「お年寄りが安心して暮らせる街づくり」というふうに訴えた方が
当選する確率が高いことになります。

政治家を責めないで下さい。政治家が悪いのではありません、
選挙に行かない有権者が悪いのです。


誰だって、候補者になれば、同じことをするはずです。

こんな露骨な受益格差があるとしても、
まだ選挙に行かない選択肢を取るのでしょうか?


このようなデータがあるにも関わらず、
まだ80歳以上のお年寄りも低い投票率で良いと思っていらっしゃるのでしょうか?

原則4年に一回と3年に一回、
日曜日に投票所に行って投票するほんの数十分の自己犠牲で、
日本の政策が皆さんの都合の良いように劇的に変わるのです。

投票所でどんな候補者に投票するかは二の次、

とりあえず行くことによって、日本の政策が変わるのです。


もちろん、政治をしっかり勉強して、
日本のためになる候補者を選出できれば更に良いことは言うまでもありません。

衆議院選挙の選挙演説で無党派層は寝ていてくれればいいと言った総理大臣がいましたが、まさしく、60歳前後の人たちの支持を取り付けたい政党・政治家にとっては、若者や無党派層に選挙に行かれては困るのでしょう。

特に、予算は限られていて、
原則一方が勝って一方が負けるゼロサムゲームと同じ仕組みです。
一方が得をすれば、他方が損をするような状況では、
現在までのところ、老人が得をして若者が損をしてきた。これが日本の政治です。

このブログを読まれている若者の皆さん、それでよろしいのですか?
このブログを読まれている中年以上の皆さん、それでよろしいのでしょうか?

特に60歳以上の有権者の皆様、この事実をご存知でしたか? 
お年よりのツケを皆さんの子供が支払う政策、このままで良いと思っていらっしゃいますか?
少なくとも世代間の格差、同じにすべきではありませんか?

すべての有権者の皆様、現在の状況を打破したいと思われるなら、
とにかく投票所に行くことをお奨めします。
あるいは自分が政治家になることをお奨めします。

というわけで、いよいよ、次回は最終回です。

2009年3月23日 (月)

第78回 さて、わたしたちはどうすべきか? まず、ここまでをまとめてみると…

いよいよ最終章!いままでのふりかえり

日本の政治について、根幹となるべき最も重要な点について解説してきました。

このブログさえ読めば、日本の政治が見えてくるように書いてきました


皆さんが読みきったということは、日本の政治をかなり理解できたということです。
これはすごいことです。
日本人の多くが関心を持とうと思っても持つことができない分野で、
新しい知識を得たということですから。

私たちが関心を持とうと持たざると、実際に政治は動いていて、
私たちに多大な影響を与えています。
皆さんが思っている以上に、影響を与える分野ですが、
誰も教えてくれないし、義務教育でも教えてくれないので、知識が持たないのが常態です。
そんな状況で、このブログを読みきったということは、すばらしいことです。

このようなブログも最終章を向かえました。

ブログを開始してからすでに半年が経過しました。
この間、以下の二つについてお話してきました。

第一部 4つの政治勢力
(有権者、政治家、特別利益団体、官僚の4つ)がどのように関わっているのか?

第二部 実際にわが国の存亡に関わる政策の話
(経済、防衛、財政赤字、食料とエネルギー)

この最終章では第一部と第二部を総合して、
MAJIBIJI世代の皆さんが置かれている立場を強調したいと思っています。

まず第一部の重要な点を要約してみます。
すらすら読めたら、政治の基本的流れを理解したということです。

第一部のおさらい

まず、日本政治の基本は民主主義ということです。
民主主義の解釈はさまざまであっても、根本的に「間接民主制」を前提にしています。
間接民主制とは私たち有権者がいて、
有権者の代わりに国の舵取りを、選挙区によって選んだ代議士に委託する制度です。

本来なら、私たちは持っている政治知識を総動員して最も好ましいと思う候補者や政党に貴重な一票を投じて代議士を選出しようとします。
選出された代議士もわが国のために粉骨砕身して寄与しようとします。
これが民主主義の理想です。

ところが、私たち人間は根本的に利己的であるという前提に立つと、
上記の理想論は現実的には機能していないことが分かります。

有権者である私たちは、賢明な意思決定をするには充分ではない政治知識しか持ち合わせていない場合が大多数です。
4年に一度の衆議院議員選挙と3年に一度に半数を改選する参議院選挙のためだけに
政治知識を溜め込む脳のスペースがあるのだったら、仕事や勉強や趣味やその他の
自分に「直接的に」利益をもたらすものを記憶したり学んだりすることの方が合理的です。

ですから私たち有権者は「合理的に無知」になっているものなのです。
この無知状態、褒められることはないにしても、決して非難されるべきものではありません。

政治に対して無知識・無関心、これは分かってはいるけれど止められない状態で、
非難されるとしたら民主主義という制度が悪いのです。


もちろん、人によって知識のばらつきがあります。
それは政治に関する知識を得ることで利益を受ける人たちが持っているもので、
仕事をしていたら副次的に政治の知識もついてきたというおまけみたいなものです。
たとえば、公務員の政治知識は最も高いですが、
それは仕事をしてゆく上で政治の知識が必要だから得たのであって、
たとえば公務員が仕事を辞めて専業主婦になったら、データが示すように、
政治知識は少なくなるものなのです。

ここから推測されることは、
有権者は国政選挙において
必ずしも正しい候補者を選んでいるとは限らない、
むしろ間違いを犯しているのではないか

ということです。
これも仕方がありません。

知識がない有権者が
どうして日本にふさわしい候補者を選ぶことができるのでしょう。

喩えて言うなら、受験勉強をしない高校生が大学入試を受けるのと同じで、
正しい答えにたどり着く確率は非常に低いです。

他方、そのような経緯によって選出された代議士も、国民のためとは言いながら、
実際には「国民」というのは方便で、
自分の選挙区において自分を支持してくれる有権者だけのために
政策をアピールしてゆきます。


少なくとも自分を支持してくる有権者の利害と自分の敵対する候補者の利害が対立するような政策であったら、
ほぼ間違いなく前者のために政策を打ち出すことでしょう。
投票してくれるかどうか分からない浮動票の有権者や、
対立する政党を支持する有権者に利する政策をアピールすることは、
自分の人生がかかった状況(選挙に負ければ、失業者になってしまいます)においてはあり得ないことです。

そんなことをするなら、地盤固めのために自分の支持層に対してアピールする政策を実施するのが当たり前です。
その上で街頭に立って、当たり障りのない政見を披露して、
浮動票を獲得して「上積み」を狙うのが一般的なのです。

私たち有権者は通常は街頭に立った候補者しか見ていないので、
彼(彼女)らの本当の政策は分かりづらいです。


特別利益団体

また、選挙にぜひ勝ちたい代議士にとっては、
選挙ごとに億単位で出てゆく費用をどうにかしてひねり出したいし、
固定票、できればたくさんの組織票を持つグループから支持を取り付けたいものです。

他方、豊富な財政的資源と組織票を持つ団体としても、
選挙において支持する代わりに、当選後には政治(予算や立法)を通じて、
自分たちに利益をもたらしてほしいと願うわけです。
このようなグループを「特別利益団体」と言いますが、
特別利益団体の利害と代議士の利害とはこのようにしてがっちり一致
することになります。

つまり、選挙で当選したい代議士と、政治を通じて「レント」(利益)を獲得したい特別利益団体は互恵的関係を築くことになる。

今の政治、官僚まかせでいいの?

国会議員とは定義からして立法府に属する人々であるので、
本来は法律を作るのが仕事なわけですが、
現実的には法律のほとんどは「国家官僚」によって作られています。

法律を作るためには膨大な知識が必要であることから、
公設秘書を3人しか持てない国会議員にとっては、
そもそも法律を作る体制ができていないのです。

私たち有権者の立場からも、秘書3人と代議士の4人が集まって、
国を左右する法律を作られたら、不安でたまったものではありません。
したがって、代議士が作らない以上、現実的には、霞ヶ関の官僚が作成し、
それを国会の場で討議して、採決するという形になってきました。

国民のための法律と言いながら、

どうして官僚が自分たちが損をするように法律を作るでしょう!

自らに不利益を招く法律をわざわざ作るわけがありません。
むしろ、自分たちを利する法律を作っている
というふうに考えた方が自然です、
なにしろ、国会議員が作っているのだ、官僚が採択したのではない、
したがって全責任は国会議員にある、という隠れ蓑が常に存在するわけですから。

ですから、このブログでは、
もっと政治家の力を強くすべき
、というふうに訴えてきました。

世界でも類稀な、官僚による官僚のための「官僚支配国家」日本を、
有権者から選出された代議士が法律を作れるようなシステムにしてゆくべきなのです。

しかしながら、現実には、国会議員の不祥事や不適切発言等で
メディアからバッシングをされることにより代議士が弱体化していると同時に、
総理大臣が一年未満で交代することが何度も続いて政治の不安定さが増大しています。

1990年から20年間で12人の総理大臣が誕生した国なんて他にありません。


これでは首尾一貫した政策、短期的には国民に損をもたらすが中長期的には多大な利益をもたらすような政策を打ち出すことが難しい状況になっています。



有権者、もっと力を持とう!

とはいえ、中央官僚の天下りの完全禁止
あるいはそもそも官僚支配を弱める政治的動きの中で、
今後とも日本の官僚支配体制は相対的に弱まってゆくことでしょう。

本来の民主主義の姿からすれば正しい動きなのですが、
問題なのは、代議士も中央官僚も同時に力が弱まることは
わが国の政治的見地からすると必ずしも歓迎される事態ではない
ことです。

中央官僚の支配を弱めることが国是とするなら、
パワーの空白を政治家で埋める方策を採らなければならないと思います。

私たち有権者の力が強くなっているわけでも、
政治知識が増えて正しい意思決定が増えているようにも見えないので、
消去法でいけば、
特別利益団体の力が相対的に強まっているか

あるいは日本という国の意思決定メカニズムが充分に機能しなくなっているのか
のどちからです。
どちらの場合も決して好ましい状況とは思われません。

図表1にすでに学んだことを復習する意味で、
私たち有権者国会議員特別利益団体および(中央)官僚の四者の
基本的なギブアンドテイクの関係を示しておきました。

図表1 四者の基本的交換関係
791

こう見ると、やはり有権者のギブアンドテイクがいかにも弱い
国会議員を中心にした、特別利益団体、中央官僚の三者のがっちりした関係には太刀打ちできないかもしれません。

これは日本版「鉄の三角関係」(Iron Triangle)です。
私たち有者の一票が根源的にすべてを支配しているにも関わらず、です。

2009年3月22日 (日)

第77回 このままではエネルギーがなくなる!?

リスクに対応できるエネルギーの構成とは?

前回、日本のエネルギー自給率が低いことをお話しました。
供給不足に対するエネルギー確保はどのようにしたらいいのでしょうか?

まず、一つのエネルギー源に集中させないこと、
また一つのエネルギー源を多様な地域から輸入しておけばリスクヘッジになります

エネルギー依存問題の当座の対応はこれしかないようです。
その意味で図表5の第一次エネルギーの構成を考えることは大切です。

図表5  4ヶ国の第一次エネルギーの構成
(2007、日本原子力文化振興財団)

761

図表5を詳しく見てゆきましょう。

わが国はエネルギー源の半分を石油、
4分の1を石炭、
天然ガスと原子力をそれぞれ全体の14%、13%、
供給する体制になっています。


右端にある世界平均からすると、石油依存47%はかなり高い比率です。
石油に依存するということはその分、不安定になります。
それでもよろしいでしょうか? 
もっと原子力、あるいは天然ガスに依存すべきではありませんか?

たとえば、
フランスのように、原子力発電に39%依存するというのはどうでしょうか? 


安価だし、環境には化石燃料より断然優しいので、
国民である皆さんの理解さえ得られれば、もっと増やしてゆくのはどうでしょう? 

それとも地震国日本でこれ以上原子力に依存するのは不安に感じますか?

それでは石炭はどうでしょうか? 
中国のように、70%近くを石炭に依存するのはどうでしょう。
安価ですが、「京都議定書」に批准しているわが国としては、
石炭への依存率を上げることは国是として避けたいと思うかもしれません。

皆さんは、どのような比率が最も良いと思いますか?

エネルギー対策は、有事に備えて国家をあげて対応すべき課題

難しくて決められないですかね。
しかし、私たち有権者が決められないなら、
誰かが私たちに代わって決めていることになります。
現在の日本の大まかな指針は経済産業省が作成しています。

それを私たちの代表である国会議員、
そのまた代表である総理大臣が追認しているという形です。

エネルギー関連の族議員というのは余りいないし、
エネルギー問題を訴えても選挙区での票にはなかなか結びつかないので、
代議士の関心は薄いです。もちろん私たちの関心も薄いです。

オイルショックのような突発的な出来事がない限り、
ほとんど忘れた状態にあるのがエネルギー問題と言えます。

でも、前述したように、有事に備えるのが政治の役割。

政治の担い手の根本にあるのは、私たち有権者です。
経済産業省の官僚ではありません。


ですから、このブログをご覧になることによって、
少しでも日本の脆弱性、依存性を理解していただき、
その上で新聞等のメディアでエネルギー問題が取り上げられたら、
関心を持っていただきたいと願っています。 

また、「省エネ」とは、私たち一人一人にとっては、
一日数円単位の利益しか与えてくれませんが、
日本人1億2千7百万人にかかわる問題であり、
わが国のエネルギー依存に直接的にかかわる問題である点を理解して、
このブログを見る前よりもほんの少しでも「省エネ」の重要性に気づいてくれればとも願っています。

MAJIBIJI世代が生きているうちにエネルギーが枯渇する可能性も

世界における石油の埋蔵量(確認可採年数)は50年程度であることは述べました。
遅かれ早かれ、石油はなくなってしまいます。
MAJIBIJI世代の皆さんが一生を終えることになくなるくらいかもしれません。

日本としては、枯渇する以前になんとかしなければならないのは自明です。
石油に代わる新しいベース・エネルギーを見つけ出さなければならないのは人類の宿命です。
世界でエネルギー依存率の最も高い日本は、
特に新エネルギーを開発しなければならない。

しかし、開発しなければならない必要性は分かっていても、現在の努力レベルは低いようです。
定額給付金で2兆円配るくらいだったら、全額をエネルギー開発に投資していれば、
どれほど日本の国益になったか知れません。
たいへん残念でした。

限られた予算の中で将来のエネルギー事情を踏まえて、
投資をしてゆくことが求められています。もっともっとやってしかるべきなのにやらない。
このツケ、将来、MAJIBIJI世代の皆さんが支払わなければならないことになることはご理解ください。

最後にもう一つ。東シナ海ガス田問題

この海域において中国は1999年以降天然ガスの生産を行っています。
国際法上の境界線があったとしても、ガス田には仕切りがないので、
日本側のガスも吸い取られてしまっている状態です。
2004年になって中国が本格的開発に着手していることが分かるという外交ミス、
日本は大幅に対応が遅れてしまいました。

本来なら高い技術力を持っている日本が中国側のガス田を吸い取ってしまえばよかったものを、まったく逆のことをされてしまいました。

エネルギー依存国、日本の恥とも言うべき、対応のまずさです。
一刻も早く試掘を行い日本が取るべき資源は採掘する
これ国策として行うべきです。
対応が遅れている状況で妥協して「日中共同開発提案」なるものを提示しているようです。
採掘を開始して取られた分を取り返して開発提案をするなら交渉もスムーズに行きますが、相手が脅威をまったく感じない段階で下手な提案をすれば、
足元を見られて中国によいようにやられてしまいます(やられています)。
外交音痴の日本政府、罪は大きいです。

日本の国土は世界第60位と申し上げましたが、
排他的経済水域(EEZ)面積では世界第6位です。

わが国は世界でも有数の「海洋国家」。
海の中には原油のみならず、レアメタルも豊富に存在します。

採掘するためには巨額の投資が必要ですが、
わが国の将来を考えると投資に充分見合う行為です。

借金漬けの財政事情から巨額の投資は当分の間できません。

不景気だからといって景気を底上げするために巨額の公共投資をするのと、
エネルギー資源開発のために同じ額の投資をするのと、
どちらが日本にとって重要なのか考えていただきたいものです。

わが国の固有の領土である北方領土、
竹島、沖ノ鳥島等に関して近隣諸国に対して毅然たる態度を取ることの重要性は、

国防上の理由のみならず、食料資源・エネルギー資源の確保という観点からも
ご理解いただけたらと願っています。

2009年3月21日 (土)

第76回 第二の依存 エネルギー消費大国日本

日本のエネルギー自給率はたった4%!

わが国の「衣食住」における第二の依存体質、
エネルギー問題について解説したいと思います。
世界でも有数のエネルギーを消費する「エネルギー消費大国」日本の事情です。

世界の約5%を消費して世界第4位
世界の2%未満の人口をもつ日本人が約5%のエネルギーを消費している

わけですから、世界的な消費大国。

食料の自給率が40%前後という話でしたが、エネルギーはさらにひどい。

図表4は主要国のエネルギー自給率を表したものですが、
日本の事情を端的に物語っています。

日本の自前の国産エネルギー、たったの4%!
 

先進国の中でもちろん最下位。

図表4 主要国のエネルギー自給率
(資源エネルギー庁より)
752

フランスは7%、イタリア15%、ドイツ23%です。
米国61%、英国78%で、
食料自給率でも100%を越えていたカナダは、
エネルギーも139%と断トツの一位です。
カナダという国、国土のほとんどを米国と接していますが、
米国との外交関係が良好な限り、衣食住の基本的生活の面では世界で最も安定している国と言っても過言ではありません。

その対極にあるのが日本。
島国であるために本当は最も安定しているはずなのですが、
エネルギー源に恵まれていないために他国に依存しなければならないことから、
非常に不安定な国になっています。

原子力発電に必要なウランは海外から輸入していますが、
再利用可能なので自給率に含める考え方もあります。

ですから、図表4では原子力を入れた形にもなっています。
それでも、わが国の自給率は19%。残りの81%は完全に海外依存です。

エネルギーにはこんな種類がある

エネルギー源の主なものは、原子力のほかに、化石燃料である石油石炭天然ガスがあります。そのほかにも水力風力太陽光発電等があります。
主な特徴については、以下の通りです。

①    石炭

化石燃料の一つ。世界の埋蔵量(確認可採年数)は230年以上と推定。
安価であるが、かさばる。発電コストは比較的低い。
二酸化炭素の排出量が大きく地球温暖化に寄与するため、依存率は下げたい。
発展途上国ほど石炭への依存率が高いのが特徴。

②    石油

化石燃料の一つ。世界の埋蔵量(確認可採年数)は50年程度だが、
昨今の技術革新によりさらに年数が増えると言われている。
地球環境のためには必ずしも好ましいとは言えないが、石炭よりは良い。
わが国は中東諸国、特にサウジアラビア、アラブ首長国連邦、イランから主に原油を輸入しているため、安定的確保が課題。
原油価格は需給のみならず、投機やOPEC諸国の政治事情に左右されるため、
原油価格が不安定であるのが問題。

③    天然ガス

化石燃料の一つであるが、環境特性が他の化石燃料よりも優れている。
東南アジア、特にインドネシアに依存。
熱効率が大幅に上昇し、出力調整機能も有している。
コスト的には石油より高価。

④    水力

わが国が自給できるエネルギー源の一つ。
河川にダムを建設することによって可能なことから、供給には限度あり。
また河川の生態系に悪影響を与える、自然の景観を損なうといったデメリットもある。発電コストの観点からは最も高くつく発電方法である。

⑤    原子力

原子力発電コストは非常に安価である。
ウランそのものは海外から依存するものの、多様かつ政治的に安定した国に分布しているため、供給には問題が少ない。
リサイクルが可能であることからエネルギー自給率に組み込まれることもある。
地震国であるわが国では原子力発電所をどこに作るかが問題。
また発電所において問題が発生あるいは発生する可能性があるときに、
隠蔽する可能性が否定できず管理体制に問題が内在することは不可避。

⑥    風力

風力も自然エネルギーであるため、環境的にまったく問題なしだが、
「風況」という制約があるため、ベース供給力にはならない。
あくまでも補完的エネルギーである。

⑦    太陽光

自然エネルギーを利用した再生可能なエネルギー。
温室効果ガスを排出しないため環境に優しい。投資ストが高い。
エネルギーを得るためには季節、天候、時間帯といった制約があるため、
ベース供給力にはならない。

⑧    その他

その他としては、「地熱」、波を利用した「波力」、いらなくなった廃棄物を利用した「廃棄物」発電、また近年注目を集めている「バイオマス」がある。


第二のオイルショックを起こさないためにできることは?

日本のエネルギー政策が難しくなったのは、
1950年~1960年代の高度経済成長期にいたる過程で国内に点在する石炭から、海外、特に中東諸国からの石油に依存するようになったという歴史的経緯にありました。

1950年代前半ではエネルギー自給率が80%程度だったこと
現在では4%だという事実を考えると、
如何に急激に海外のエネルギーに頼ってきたのかが理解できます。

エネルギーにかかわる技術やコストを考えると、
なんだかんだ言っても総合的に石油が最も安価だったために、
ピーク時の1973年では全エネルギーに占める石油の割合は77.4%で、
その石油のうち、ほとんどが中東地域からの輸入でした。

そこに1973年の第一次オイルショックが到来します。
原油価格は3ヶ月のうちに一挙に4倍に跳ね上がり、
日本経済は未曾有の不景気になってしまいました。

翌年は狂乱物価の年と言われたように消費者物価指数が23%上昇し、
日本中がパニックに陥りました。
テレビの深夜放送は休止、デパートもエスカレーターを運転停止
にしたところもありました。

石油とは何の関係もないトイレットペーパーを
日本国民が大量に買いに走った

ために極度の品不足になり、スーパーマーケットでは長蛇の列という光景があちこちで見られました。ガソリンスタンドに長蛇の列なら話が分かりますが、トイレットペーパーですからね。
まったく理解不能です。でも実際に起こってしまった。

その反省から、石油の依存、中東諸国への依存の減少を日本のエネルギー政策として推進してゆきました。

その結果、現在では石油依存率は47%まで落ちています。
しかし、それでも、近年のガソリン価格の乱高下に見られるように、
海外からの供給状況や政治事情によって、
私たちの生活は不安定であることには変わりありません。

ある程度の不安定さは不可避です。問題は

どの程度の不安定さならば、一時的な供給不足に耐えられるのか

という点です。
たとえばなんらかの理由で海外からのエネルギー供給がストップしてしまった場合に備えて何ヶ月分くらい備蓄しておくべきなのか、
どのエネルギーのどの国から輸入すべきなのか
新エネルギー源を求めて税金をどのくらい投資すべきなのか、
といった問題があります。

日本政府の総合的な政策を考えておかなければなりません。
エネルギー問題のキーワードは「多様化」でしょう。

次回は、具体的な対策について考えてみましょう。

2009年3月20日 (金)

第75回 食の安全・自給率と関税の関係

関税の働きとは?

食の安全、食料安全保障の立場から、有事に備えて、
食料の自給率を高めておきたいものです。
将来の不測の事態に備えるのが政治の役割ですから。

従来は、輸入品目に対して関税をかけることによって、国内の農家を保護してきました。
たとえば、100円で輸入できるものに対して100円の関税をかけて200円にして、
国内で販売させる方法です。

これを「消費者負担型農政」と言います。
消費者は高いものを買わなければなりませんが、
その分、国内の農家は200円という価格で売ることができます。


ところが、この農産物の関税障壁、GATT(関税および貿易に関する一般協定)の
ウルグアイラウンドあたりから、1995年にWTO(世界貿易機構)に衣替えして特に難しくなってきました。

米国や欧州はもちろん、世界中のどの国でも、関税によって国内の農業を保護しています。
しかしWTOでの合意を通じてだんだんと難しくなってきています。
どの国でも品目を絞って関税をかけているのが実情です。

日本の場合は、国内の農家を守るために、約100品目に200%以上の関税をかけています。
たとえば、落花生は500%バター330%砂糖270%といったように、
かなり高い関税をかけています。
コンニャクイモのように1,705%の関税をかけているものがありますが、
中国の製品との価格競争に負けてしまい、
コンニャクイモ生産農家が全滅してしまうという理由からです。

低い日本の関税率。さらに下がると・・・

コンニャクイモ農家が全滅しても良い? 
この辺は議論が分かれるところですね。
確かに、何にどのくらいの関税をかけるかは、
自民党の族議員の力関係によるというふうに考えた方が分かりやすりです。

農業従事者が多くを占める選挙区においては、
地元の選挙区の農家を守ることが支持票につながります


したがって、海外からの農作物に関税をかけることによって、
選挙区の農家を守ってゆくことになるのです。
どの品目にどのくらい税をかけるのかは「農水族」の力によるところが大きいのです(このような選挙区では民主党の議員も原則として関税に反対しているわけではありません)。

関税の全体の平均比率は12%です
世界的に見れば、決して高い方ではない。
下の図表に示す通り、カナダ(5%)や米国(6%)より高いですが、
EUより断然低いです。世界の192ヶ国全体から見れば、非常に低い関税率です。

現在、WTOでは「ドーハ開発ラウンド」という交渉の場で、
関税率を引き下げるかどうかの闘いをしている最中です。
交渉の図式としては、図表2にあるように最も高い関税のインド最も低い国の一つ米国との間で交渉が行われているもので、日本はその成り行きを見守っているといったところです。
2008年夏ではほとんどまとまりかけたのですが、
最後の最後で米国とインドは緊急輸入制限問題でまとまりませんでした。

図表2 主要国の農産物平均関税率
(OECDより)
741

2008年秋のリーマンショックと金融危機を契機に、合意する方向に向かっています。
1929年の大恐慌のときには各国が自国の産業を守るために保護主義に走ったことにより、さらに危機が増大したという経験から、次の金融危機には保護主義はやめようという機運が盛り上がり、その勢いがWTOに飛び火しているようです。

もし合意したら上記の農家への「消費者負担型」保護政策は転換をせざるをえなくなります。
WTO合意後は、日本の自給率がまた下がる、自民党支持者がまた減る
という結果になります。


関税の撤廃は不可避?

海外から日本はずるいと思われているのかもしれません。
自分たちは安い製品を海外に売っているくせに、
他国からは安い農産物を輸入するのは困ると 言っているわけですから。

しかし、食の安全と食料安全保障の立場からは食料はなるべく日本産が良いです。
これが日本人の人情です。
でも、もう無理。
そんな理屈は世界では通じません。
製品の自由化は良いが、農産物の自由化はだめなんて理屈は、
農産物を売る国々にとっては通じません。

特に図表1で掲げた自給率100%以上のケアンズ・グループの農産物輸出国は、
関税を撤廃して完全自由化を求めています。

我 が国としては、農業は農作物を作るだけではない、
治水や景観などに寄与するもの、つまり、農業(agriculture)は
日本特有の文化 (culture)の一つであるという「多面的機能」(multi-functionality of agriculture)を主張していますが、
多勢に無勢、他国はなかなか聞き入れてくれません。
米国最強時代に生きる現代世界、なんだかんだ 言っても米国の言う通りに世界が動いていますので、近いうちに自由化にならざるを得ないのは不可避です。

ですから、(消費者負担型の)関税に頼るのは、
国 の政治のかじ取りとして、WTO中心時代を踏まえると正しい姿ではないのかもしれません。


消費者負担型農政から財政負担型農政へ

しかしながら、日本だけが農家の保護政策をとっているわけではない
米国だって、カナダだって、EUだって、みんな農業従事者を保護する政策をとっているのです。
OECD の生産者支持推定量(PSE、関税による消費者負担+納税者負担による農家への補助×生産量)の観点(東京財団上級研究員、山下一仁氏の2002年デー タ)からいえば、
PSEは米国396億ドルEUが1,005億ドルなのに対して、
日本は439億ドルで、決してそん色ありません。

それにもかかわらず、 日本が農業過保護国として米国やEUから攻撃されるのは、
農家の守り方が、米国やEUと異なるからです。

先ほどから、日本の保護形態は「消費者負 担型農政」という言い方をしてきましたが、
欧米ではこれに代わって「財政負担型農政」に転換しています。
どういう農政かと言うと、農作物の取引は原則とし て市場メカニズムに任せる、
そうすることによって価格自体は低価格になる、
その減った分に対して、農家に対して「直接支払い」を行うという仕組みです。

農 業問題に詳しい山下一仁氏は図表3のような形で、
欧米と日本の農業政策の違いを表していますが、
要するに、日本は市場原理に基づいて農作物製品を売買して おらず、
生産調整や高い関税等によって価格維持をしているため、
我が国の消費者は損をしている


一方、農家を保護する手段としては消費者を犠牲にするのではな く、
原理原則は市場メカニズムに任せて、
農家に直接的に差額を支払うことによって守ってゆこうとする方式を欧米がとっている、欧米型にすれば他国からの批 判は免れる、ということです。

図表3 各国の農業政策比較
(出典、山下一仁著「直接支払いの必要性と展望」)

751

わが国の農水関連予算は毎年2兆5千億円程度ですが、
このような多額なお金を使って、
農業の衰退を招き、食料自給率は毎年減少し、
他国からは農業過 保護国として批判されているというのは、
農業水産業全体のかじ取りをしなければならない立法府の国会議員や行政府、
特に農水省の責任が大きいと言えるかも しれません。

現代日本の民主主義の仕組みとして、小選挙区から選出される代議士が、
自分の支持者に対して、「近視眼的」に都合の良い政策を訴えた り、
選挙民が得をする関税をかけるのは仕方がないと言えますが、
そうであるからこそ、総理大臣がリーダーシップを発揮して、
農業改革を指導してゆくことが 必要です。

そうでなければ、いつまでたっても、海外から農業保護主義国日本というレッテルを貼られ、
他方、そういうレッテルをつけられつつも、海外からの 農作物の輸入量は増えて食料自給率は減少するという、名実ともに損をする状況がずっと続くことになるでしょう。

農業、食料問題、一冊の本でも足らないくらいの問題が山積していますが、
ここでは食料自給率の観点からWTO問題に絡めてお話ししました。
次回はエネルギー問題。これもたいへんやっかいです。

2009年3月19日 (木)

第74回 自給率が低い原因はこれだ!

どうして日本は自給率が低いのか?

農産物が安いのは、労働力が安価な中国ばかりではありません

大豆や小麦の過半数は米国から輸入しているといったように、

先進国の中でも勝ち組がいます

米国に出来て、日本には出来ない、「何かがおかしい」。
米国にできるのだったら、
日本にできると考える方が自然です。

日米の労働賃金の格差はほとんどありませんので、
米国で安く作ることができるならば、
日本でも安く作ることができなくてはならない。
でも実際にはかなりの開きがあるわけです。

そのおかしい原因を挙げるとするならば、
日本の場合、一農家あたりの作付面積が異常に低い点です。

戦前までは、だいたい農地面積550万ヘクタール(ha)、
農業就業人口1400万人、農家戸数550万戸
で安定していました。

しかし、2005年現在の総農家戸数は、農水省の統計では、284万戸です。
そのうち50万円以上農産物を販売している「販売農家」は195万 戸
自分の家庭だけに栽培している「自給的農家」は88万戸(全体の31%)です。

農業就業人口は334万人
65歳以上の高齢者は194万人で全体の 58%です。
農地面積は470万ha。

しかし耕作放棄地は38万haに増加しています。

5 ha以上の農家はたったの9万戸程度で、
農家の平均耕作規模は1.15 ha程度と考えられます。
1ヘクタールとは100m×100mの面積なので、1.15 haというと
農作物を作るには何とも小さいと思われます。

まとめると、農業分野では、

①    一戸あたりの平均農地面積は圧倒的に小さい、
②    農家戸数や農業者数は減少している、
③    自分の食べる分だけは確保する農家は増えている、
④    農業全体では著しい高齢化の進行している、


という実情がうかがえます。

お金儲けしにくい日本の農家の仕組み

米作は単位面積あたり収量が高いので、
耕作面積が小さくてもある一定の収益があがります。

ところが小麦や大豆は低い、かつ日本政府が生産調整によっ て米価を高くしているために、耕作面積が小さいと農家としては米を作る方が得策
誰もわざわざ損をしてまで小麦や大豆に転作することはないわけです。

です から、いつまでたっても、
小麦や大豆は大量生産可能な国である米国から輸入せざるを得ない状況
ではあります。

大量生産のためには人から農地を買収 しなくてはならない、
でも不動産価格は非常に高いですから、
現金を持たない農家が投資することもできないし、
土地を買って大量生産をするためには
それなり の人材を確保しなければならないので
季節労働者として新たに雇用しなければならなかったり、
トラクターの購入等初期投資は高額でもあり、
且つ農業は天候に 左右されるので不作の年は赤字も覚悟をしなければならない

ということにもなり、農家が、規模を拡大して大量生産することを妨げる条件も山ほどあるのが現状 です。

農家の人の年収、低すぎませんか?

ですから、現在持っている土地の大きさや耕地の「豊度」をベースとして、
一家の中で誰が農業に従事するのがベストなのかの帰結として、
専業 農家になったり、兼業農家になったり、
兼業の仕方も三ちゃん農業(じいちゃん、かあちゃん、ばあちゃんの3つの「ちゃん」の総称)、二ちゃん農業(マイナ スかあちゃん)、
一ちゃん農業であったりしているということなのでしょう。

3,000万円以上の販売実績がある農家は、
若干の増大傾向にあるものの、現在たったの3万戸
しかありません。

3千万円以上販売している自営業はいくらでもあるのに、
農家に限ると3万戸しかないのは、
わが国の農業はお金儲けのできない仕組みになっていると言えます。

広 い土地を持っている人たちがお金持ちにはなれない仕組み、
土地を持たない私(たち)にはかなりの違和感があります。

さらに、人間が生きてゆく上で根幹にか かわる
「衣食住」の一つ「食」を生産する人たちの平均年収が200万円未満という事実も、
直感的に受け入れられません。

私たちが消費者であって安価な食料 を購入したいという立場からは嬉しいことですが、日本政治の立場(もちろん農家の立場)から見ると、
そんなに年収が低くて良いの、と思いませんか?

2009年3月18日 (水)

第73回 フードクライシス!?日本の食料事情

食料の輸入大国、日本

まず、食べ物の話。
「食料」問題と言います。「食糧」ではありません。
「食糧」とは穀物などの主食のこと、
広い意味での食べ物を指す「食料」とは異なります。

わが国の食料問題、米や小麦等の食糧はもちろん、肉、魚、野菜、果物等、
広範にわたります。ですから、「食料」問題です。

まず、わが国の20世紀型貿易の基本を復習しましょう。

天然資源に恵まれないわが国は、優秀な労働力に裏打ちされた人的資源をもとに、
安価な天然資源を輸入し、加工して付加価値をつけ、製品を国内外に提供する
というものでした。

天然資源の欠如という理由のほかにも、
円高、高価な労働力、高い法人税等によって、
日本企業はより安価に生産できる海外の国に生産拠点を移転させてきました。
移転先は近隣の中国やタイやベトナム等のアジア諸国だったわけです。

さて、食料も同じ?

本来は同じであるはずです。
食料も商品。
ですから、可能性としては、安価な農産物を海外から輸入して、
加工して付加価値をつけて、食料製品として輸出する。
本来ならこれが可能なのです。でもしていない、できない。

盛んに農作物を輸出している国(オーストラリアなど)もあれば、
農作物を加工して売っている国(フランス、イタリアなどのワイン輸出国)もありますが、日本のように消極的な国もあります。

そんなわけで、我が国は現在「安価な食料を海外から輸入して」のところまでは
大量にしていますが、
加工して付加価値をつけて海外に売る」ことはしていません。

ですからほとんどの場合、海外の食料は私たちの胃袋を通っておしまい、
そこが終着点です。

海外から大量の食料を輸入すること自体、大きなテーマです。
なぜなら、このフレーズは、

●    食料の自給率
●    食料の安全保障
●    食の安全

等を意味しているからです。

食料の自給率が下がれば、食料の安全保障や食の安全が脅かされることになります

ですから、当然のように、日本は食の危機に晒されている、ということになります。

もはや、お味噌汁の材料も日本製ではない!?

食料を自分の国に生産して消費する比率を自給率と言います。
いわゆる「国産」ですね。

たとえば、天ぷらそばをいただいたとします。
平均して、どのくらい国産の食料が使われているか、ご存知ですか?

農水省によれば、天ぷらそばを構成する食材の自給率はたったの20%。
その内訳は?
 
原材料のそばの消費量の23%しか日本で作られていません。
77%は海外からの輸入です。

海老は全体の消費量の5%しか日本で水揚げされていません。
海老は東南アジア、特にベトナム、インドネシアからの輸入が多いです。

ころもの原料となる小麦は14%、ほとんどが米国とカナダからの輸入です。

しょうゆの原料の大豆に至ってはたったの5%。


たとえば、日本の伝統的お味噌汁、
実は76%が米国から輸入した大豆で作っていることになります。

市販されている安価な味噌はほとんどが輸入大豆を使ったもの。
その味噌を使ってお味噌汁を食べて「やっぱり日本食は美味しい」とか言われても、
複雑な気持ちになりますね。

天ぷらそばばかりではありません。
特に昼食のメニュー、ほとんどが50%以上の依存率になっています。

特に依存率が高いのは、ハンバーグ定食の89%
スパゲッティミートソースは92%ラーメンは95%
お店としては、安いランチにしたいのならば外国産でなければ不可能なのです。

どんどん下がる日本の自給率

安くて良質な商品は世界中をかけめぐっています。
テレビもカメラもパソコンも歌もお金も人も。
食べ物だけ例外というわけではなく、
ワインもジュースもフルーツも牛肉もえびもキャビアもフォアグラも、
需要さえあれば、世界中を駆け巡るのです。

図表1 主要国の食料自給率
731

その結果が、図表1です。
図表1は1965年から2005年までの主要国のカロリーベースの食料自給率を表しています。

まず一番下に位置する日本の食料自給率を見ていただきましょう。
太平洋戦争中はほとんど国産だったわけですから、
1945年時点では100%と考えて差し支えないです。
20年後の1965年では73%

その後漸減して、21世紀に入ってからはだいたい40%前後で落ち着いています。

つまり、
○    現在の日本の食料自給率は40%。

穀物だけに限ると
○    穀物自給率はたったの28%
なのです。

さらに、牛や豚の家畜を育てるには飼料が必要ですが、
○    飼料の自給率もわずか25%
です。

日本人も、日本人が食する牛や豚といった家畜も、
海外からたいへん依存しているのが現在の状況です。

他方、オーストラリア、カナダを筆頭にフランス、米国は100%を越えていますので、
食料の輸出国ということになります。

これら巨大な農業国はなるべく海外に農産物を売りたいと願っています。
大きな儲けになりますし、将来、食料を政治的な武器に使うことも可能です。
ビジネスの側面と政治の側面の両方から、ぜひ他国に輸出したい。

そのターゲットになっているのが日本やスイスといった国々
なわけです。

なお、食料輸出国を総称して「ケアンズ・グループ」と言い、
国際会議の場では一致団結しているのが特徴です。
特に農業問題を扱うローマの国連専門機関、
たとえばFAO(食料農業機関)、WFP(世界食料計画)、IFAD(国際農業開発基金)では発言力が大きいです。

安さをとるか、食の安全をとるか

わが国の食料自給率が減少した一般的な説明としては、
日本の食文化の多様化に伴った結果、減少しているとか、
新たな食料の担い手が少ないからということになっていますが、
ざくりと大雑把にいえば、
自給率の低下の最も大きい直接的原因は一つ。

日本人が日本の土地を使って作る農作物は高く、
他国で作られたものは安いということです。


たとえば、労働力が安価な中国等の発展途上国で作られた製品は安いです。
食料も同じ
中国からの輸入商品は、家電にしろ、洋服にしろ、食料もみな安価なのです。

安価な食料には常に需要があります。
ただし、電気製品や衣類の場合、壊れたり破れたりしても、
取りかえてもらえば問題ありませんが、
食料の場合には、食べて下痢したから、取り替えてくれ、という次元の問題ではありません。
食の安全」とは、一つ間違えれば、生命にかかわる問題ですから、
電気製品と同レベルでは語ることができない問題です。

海外からの農産物ではどのような肥料が使われ、
どのような品質管理が行われているかはたいへん心配なところです。
特に、2008年の中国の毒餃子事件、毒粉ミルク(メラミン)事件等を踏まえると、
国産にこだわりを見せるのが自然でしょう。

確かに、内閣府が2008年に実施した「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」では、93.2%の日本人が将来の食料輸入に不安を持ち、食料自給率を高めるべきと考えているという結果が出ています。

しかし、実際問題として、前述の天ぷらそばの例のように、
原材料は海外からの輸入品で加工は日本で行い、
見かけだけではほとんど変わらない状況ですと、
エンゲル係数を高く出来ない低所得層では、安価なものに対する嗜好となり、
原産地の危惧や味へのこだわりは犠牲にしなければならないのかもしれません。

ですから、ほとんどの人が

自給率は高めるべき、国産ものの方が安全だし(たぶん)、おいしい(たぶん)のだけれど、自分の収入を考えると、実際には安価な海外ものに手を出してしまう

ということになっているようです。

他方、たとえば売る側の外食産業としても、
価格競争が激しいので
安価な海外の食料を用いなければならないということになります。

大衆酒場やファミリーレストランではどれもたいへん安いですが、
輸入食料を使っているためにできることです

2009年3月17日 (火)

第72回 依存大国ニッポン

さて、財政赤字から一転、本日から、日本がどれくらい海外に依存しているか
その現状についてお話していきましょう。

私たちホモサピエンスが生きてゆくには、
衣食住に最低限満ち足りていなくてはなりません。

防寒し、栄養を補給し、雨露をしのぐ。
狩猟採集時代、日本はきっと住みよい場所だったに違いありません。

気候はシベリアあたりに比べれば温暖ですし(私たち日本人の祖先の70%~80%は弥生系で、弥生人はシベリア周辺に住んでいました!たとえばウィンクができない人は弥生系です。詳しくは拙著『なぜその人に惹かれてしまうのか?』をご参照)、
山海の食料資源も豊富です。

縄文時代の遺跡である青森県の三内丸山遺跡等を訪れると、
当時の日本人が何百種類というさまざまな動植物を食していたことが分かります。
穀物や野菜のみならず、栗や貝や魚も食べていました。

衣服も麻や「からむし」といった植物繊維で作った布製の服を着ていました。
毛皮ではなかったところをみると、竪穴式住居に住んで結構暖かくしていたのでしょう。

ところが、それから数千年経った現在の日本の衣食住、
我が国のものだけで済まそうとすると非常に不便な国になってしまいました。
ちょっと変ですね、縄文時代が住み良くて、科学技術の発達した現在が不便というもの…。

日本の「衣・食・住」依存率はどれくらい?

まず「」。
着る物は多くが中国製、ブランドものは欧州製で、
日本製の衣服というのは本当に少なくなりました。
日本製がかろうじて残っているのは、伝統的な和服くらいなものでしょうか。

次に「」。
カロリーベースで考えると、自給率たったの40%です。
つまり、半分以上を海外から依存している。
最低限生きるに必要な食料も自国では足らないのです。

都道府県別に見ると事情がさまざまなのですが、
自給率トップは北海道の約200%、一大食料生産地です。

北海道の他、秋田(164%)、山形(128%)、青森(116%)、岩手(103%)の東北4県がわが国の食料供給地になっています。
最低は東京都の1%。続いて大阪の2%、神奈川県の3%。

北海道・東北の食料を大都市が消費している構図が見えてきます。

三つ目の「」については、世界の人口ランクは第10位ですが、
面積は世界第60位といった数字で分かるとおり、私たちの土地や家はたいへん狭いです。
他の国の人たちからは日本人は「ウサギ小屋」に住んでいると言われたりします。

さらに、その住居を明るくするためには電気を使い、冷暖房を完備するためにはそれなりのエネルギーが必要なのですが、その多くを海外から輸入しています。

エネルギーの海外依存、一つ目の大きなトピックです。

つまり、私たちは、海外からの食料とエネルギーを依存せずには、
現在の生活レベルを維持できない
ということです。

縄文時代に遡らないとしても江戸時代くらいまでの生活レベルだったらまったく問題なかったのですが。

以前に日本国の防衛を米軍に依存していると解説しました。
ここではさらに食べ物やエネルギーも海外に依存しているという話です。

国防もそうであったように、海外への依存率は0%から100%まであって、
程度の問題ということになります。
たくさん依存するのか、少し依存するのか。

これからお話しするように、現在の日本は、たくさん依存している、というふうに考えられます。つまり、依存し過ぎ。

海外に依存し過ぎると、
国の存亡にかかわる事態が発生する確率が高くなるということです。
危険水域にすでに入っていると考えます。
だったら、政治の力(政策)でなんとかしなくてはならない、ということになります。

どうしなくてはならないのか?

このテーマで解説してゆくことにします。
みんなが正しいと思う一致した答えが出ないとしても、
食料とエネルギーに関する日本の現状を知っておくことは、
日本の政治と私たち日本人のあるべき姿が理解できるかもしれません。

日本は、いつからこんなに依存率が高い国に?

いつからこんな依存率の高い国になってしまったのでしょうか?
二つの歴史的事件がきっかけになったと思います。

まず、1853年に米国のW. ペリー提督が浦賀に来たこと。

石炭による蒸気によって鉄の塊の軍艦が海に浮かんでいるという事実に、
当時の日本人はびっくりします。蒸気船が4隻!
エネルギー問題に目覚めた瞬間、とも言えます。

その後、明治維新があり、「富国強兵」・「殖産興業」のスローガンのもとに、
日本は資源を海外依存する体質に変わってゆきました。

第二に、1941年~1945年の太平洋戦争に負けたこと

無条件降伏の直後に米軍が駐留を開始し、
日本は強制的に民主化されてゆくのですが、
その過程で、食生活も急速に西洋化してゆきました。
なにしろ、当時の腹をすかした子供たちはGHQの兵隊に
「ギブミーチョコレート」と叫んだくらいですから。
チョコレートも食べ物、米国製。

ところで、太平洋戦争(第二次世界大戦)になぜ日本が突入したか知っていますか?  たぶん多くの読者は知らないと思います。

軍国主義が原因とか教えられてしまっているので、直接の原因は知らないはずです。

原因は日本に対する石油の禁輸なのですね。


米国(A)、英国(B)、中華民国(C)、オランダ(D)が、
ABCD包囲網を作り、
日本に対して、石油の禁輸という制裁を行ったのが直接的原因でした。

当時から石油というエネルギー源は国の死活問題だった。

石油がストップされれば、
備蓄用に2~3年分しかなかった日本は終わってしまうと陸軍は考えたわけです。

今だって、当時だって、まったく同じ状況なのですが、
私たち有権者の危機意識は極めて低いです。
戦争からあまり学んでいないようです。
「戦争はいけないこと」っていうことは学んで、
エネルギーの重要性は学んでいない。偏った日本の教育です。

そんなわけで、この章では、日本の衣食住における依存体質、
特に食料とエネルギーをテーマとして扱います。
政治の重要なテーマで、
日本政府によるこの問題の舵取り、難しいです。

もっとも、日本経済は
そもそも海外からの天然資源に依存することで成り立っていますし、
国土防衛でも米国依存体質、財政赤字問題も国家予算は借金依存体質です。

日本はいつのまにか、依存体質国家になってしまいました。
(海外への)「甘えの構造」、個人レベルだけではなく、
国家レベルの政治でも存在するのでしょうか。

他人・他国に頼る体質では、
いつ他人・他国が私たちの期待を裏切るか分かりません。

他国の政情の不安定だったり、
日本に対する敵意や感情的な嫌悪感だったり、
前述のような経済制裁だったり、
農作物の不作だったり、
毒物が混入していたり、
BSEや鳥インフルエンザのような病気だったり、
さまざまなケースが考えられます。

いつ期待が裏切られても大丈夫、という水準になっているのが
重要な政治課題なのですが、どうやらこの食料やエネルギーの安全保障問題、
かなり危ない橋を渡っているようです。