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2012年2月19日 (日)

この男、いったいぜんたいどうしてここまで走るのか? 私たち人類は、いったいぜんたい、本当はどこまで走れるのか? 「ウルトラマラソンマン 〜46時間ノンストップで320Kmを走り抜いた男の記録」●干場

これほど、おもしろいとは思わなかった。
これほど、夢中で読めるとは思わなかった。
これほど、刺激的で、心を動かされるとは思わなかった。

だから、入眠材としてベッド脇に置いてあった、東野圭吾のなんだったかも(名前も忘れるくらい)、スカーペッタ検死官の最新文庫『変死体』も、夫から借りた宮部みゆきも、息子から借りた池宮彰一郎の『平家』も、みーんなあとまわし。とくに、「変死体」は、おもしろくないのを我慢して(なので入眠材としては優秀だったが)、ようやくおもしろくなってきた下巻の後半、真犯人がわかる直前だというのに、電車の中で読みかけた、こちらの男の結末のほうが気になった。

その男とは。。。。。

ディスカヴァーでは、珍しい、ドキュメンタリー、

_1_image_230_311 ウルトラマラソンマン 
 46時間のストップで320Kmを走り抜いた男の記録』

ウルトラマンマラソンではない。ウルトラマラソン(100マイル以上のマラソンのこと。100マイルは、160キロだが、日本では100キロ以上のものを指す)なのだけれど、これはたしかに、まさに、ウルトラマンもびっくりの男の記録だ。
だって、320キロだ! それも寝ないで46時間だ! 3分じゃあない。

30歳の誕生日の夜、安穏とした生活に疑問を持った「僕」は、庭仕事用のスニーカーを引っ張り出して、朝まで7時間ぶっと押しで走った。それが、僕、すなわち、ディーンのウルトラマラソンマンの人生の始まりだった。

ウルトラマラソンマンとしての「初心者」の著者ディーンが最初に挑戦したのは、ウェスタンステージ100と言われる、標高差2766メートルの山岳地帯を、累計高低差1万メートル以上を、上ったり下りたり、走るというか、よじ登ったり、川を渡ったり、野獣におびえたり、転落しそうになったりしながら、9時間以内で走破する伝統のレース。8時間と少しで達成。

最初のチェックポイントで、指と指の間にできた巨大なまめにたいし、係員が手慣れた様子で、膿を切開し、指と指を瞬間接着剤でくっつけるのには、著者ならずとも読んでるこっちも心配したけれど、その後、100マイル以上走れたと言うことはたしかに、「適切な」処置だったんだろう。。。

つぎが、気温50度の無風地帯、一切日陰のない舗装道路上の216キロメートルコース、デスバレーマラソン。パンはトーストになり、給水所の水はお湯となり、かけてくれる水はたちまち蒸発してしまう、まさに灼熱地獄の中、一度は、ほんとうに死か、リタイアかを想いながらも、ゴールイン。

そして、前人未踏の南極フルマラソン。いっしょに参加した6人の内、3人が南極点に到達したが、そのうち、普通のスニーカーだったのは、彼だけ。カイロを入れ替え(そうしないと、足が凍傷どころか、文字通り、凍ってしまう)、雪と戦い、氷と戦い、こちらも、いつ低体温症で死んでもおかしくないような状況の中、南極点にゴールイン。

最後が、副題ともなった200マイル320キロのチャリティリレーコース。普通は、12人1チームで走るので、まあ、ふつうのリレー。それを彼は、全区間1人で走った。46時間17分で。途中、一瞬まどろんだことと、気がついたら、高速道路の真ん中を眠りながら走っていて、トラックにひかれそうになってはじめて、気がついたのを除いて、文字通り不眠不休で。

これもまた、ひとくちに320キロというけれど、ひとくちに46時間ぶっとおしでというけれど、いかにそれが、すごいことか、、、

実は、編集会議で、彼の記録自体は知っていたけれど、ふーーん、すごい人がいるものね、といった程度で、実感がなかった。そりゃあ、そうだろう。ちょっと人間離れしすぎていて、まったく想像できなかった。

ところが、読み終わった今は、ディーンの息づかいが聞こえる。ひた走る足音が聞こえる。彼の苦痛と闘ううめき声が聞こえる。まだやれる!おまえにはやれる!と彼の頭の中にひびく声が聞こえる。

まさに、第一級のドキュメンタリーであり、エンターテイメントだ。

これはひとえに、その内容のすごさもさることながら、かれの筆力に寄るところも大きいと思う。その正確な描写。正直な独白。記載はないが、独りで書いたのか?

勿論、これは、翻訳書だから、翻訳にあたった小原久典さんと北村ポーリンさんの文章力の貢献も小さくないはずだ。そして、編集のカスヤも(これを置き土産に退職したが。。。かれも、ウルトラではないけれど、マラソンマンだった)。

いまは、走ることが流行っているので、好きな方には、本書はきっと垂涎ものだろう。けれども、わたしのような一般の、とくに走ることに興味があるわけではない者にとっても、下手な推理小説より、いや下手どころか、最初に挙げたように、人気のエンタメ小説よりも、ずっとずっと読書の楽しみを与えてくれる。

そして、人間の身体と精神と心の驚くべき可能性、強靱さについても。

どうしてこんなに走り続けても壊れないんだろう。一体全体、どうなっているんだろう。その仕組みについて、潜在力について、医学も科学も、まだほんとうにはわかっていないんじゃないか?と思ってしまう。

ちなみに、かれは、その46時間ノンストップマラソンにゴールインした後、応援に来ていた幼い子どもに請われて、走って遊園地に行き、ジェットコースターなどを楽しんだ後、翌日7時には起きて、何事もなかったかのように会社に行っている。
すごい・・・・・・・。

帯に、

この男、いったいぜんたい、どうしてここまで走るのか?

とある。その理由を10も20も、本書の最後に、ディーンは挙げている。

でも、そのどれも理由であって、理由でない。
まさにかれは、生きるために走る。走るために生きているのを感じる。

「最初の3分の1は、足で走る。次の3分の1は、精神力で走る。最後の3分の1は、心で走るんだ」という彼の言葉のとおり。。。

なお、かれは、本書執筆ののち、今度は、やはり不眠の500キロメートルだったかのコースも完走し、彼自身というより、人類がもつ可能性を明らかにし続けている。

 

*翻訳書ですが、本書も、電子書籍版、ならびに、紙の書籍と電子書籍のセット『ハイブリッド版』ともに、発売となっています。

コメント

書店で見かけて、気になっていた一冊でした。
最近、走ることの楽しさに気づき、もっと長くもっと速く走れるようになるにはどうすればいいか考えているので、きっとこの本からヒントが得られるのではないかと思っています。
素敵な本を世に送り出して下さり、心から感謝します。

こちらこそ、ありがとうございます。わたしも、感動しました。もっと多く読まれていい本ですよね!

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*PROFILE*

  • 干場弓子
    ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長。魚座。愛知県立旭丘高校、お茶の水女子大学文教育学部卒業。新卒時、世界文化社入社。「家庭画報」編集部等を経て、1984年、ディスカヴァー・トゥエンティワン設立に参画し、現在に至る。夫と高校生の息子との3人暮らし。好きな言葉は、「Tomorrow is Another Day」。スカーレットの言葉です。理想の男性は、レット・バトラー。もしくは、クラーク・ケント(スーパーマン)。夫は、どちらにも、似ていない。
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