一般の方向けの講演(滅多にないけど)で私も話すことの多い、業界の問題点について、「誠」というオンラインマガジンが、丁寧に報告しているのを、システム担当コセキが自主的にやっている社内メルマガで教えてくれた。
興味のある方は、こちら、「誠」をお読みいただくとして、私がその中で特に強調したい部分は以下。(茶色い部分が「誠」の記事からの引用)
①2大取次の寡占
4大出版社の規模や書店トップの紀伊國屋書店の規模は、大阪屋とほぼ拮抗(きっこう)しており、日販、トーハンに比べれば本当に小さな会社。出版社と書店はいわば中小企業の集合体であって、寡占とは真逆の群雄割拠になっているのだ。
つまり、川上と川下の企業数が多く、川中が寡占化された、砂時計のような特異な構造を出版業界は有している。他業界にはほとんど見られない構造だ。
日本型出版流通の大きな特徴は、このように日販とトーハンの流通寡占であり、出版社は全国の書店やコンビニに書籍・雑誌を流すために2社に依存しているということ。
そんななかで、書店様4000店と一店一店直接取引しているディスカヴァーが、いかにユニークな存在で先進的な存在か、おわかりいただけるでしょうか?(ただし、ローソンなどコンビニさんは、取次さん経由)
②売上げの大きい書店優遇
書店は日販やトーハンに配本をコントロールされる。見計らい配本によって、欲しくもない本も箱詰めにされて一緒に送られてくる。そして、中小零細書店や実績のない書店には、一番欲しいベストセラー本がなかなか配本されない。
取次は月々の代金回収機能を持っている。中小書店は月に2回の支払いを義務付けられている一方で、大書店は月1回の支払い。書店の決済は返品相殺方式な
ので、いずれの書店も、売れなかった本をできるだけ早く返品して、支払額を少なくしたいといった心理が働く。そこで中小書店からの信じられないほどの大量返品が発生してしまう。
新刊本の返品率は大変高い。不適正な配本、不確実な配本、非確実な押込型新刊マーケティング、非適正な新刊広告、書店の決済が送品即請求、返品自由などいくつもの原因が重なって、新刊本の推計部数返品率は60〜70%。
中小書店さんが月2回の支払いを強要されているなんて、知らなかった。
③老舗出版社優遇
実は、私がいつも2番目に強調しているのがこの部分。規模ならまだわかる。ただ、老舗かどうかということでのこの既得権優遇の制度!!
取次と老舗大手・中堅出版社200社超の間には、新刊委託部数分に対して、翌月にその何割かのお金が自動的に支払われる取り決めがある。比率は出版社によって個別に決まっていて、10割のケースから4割のケースまでさまざまだ。新刊委託で送品した本が売れようが売れまいが、新刊本を押し込めさえすれ
ば急場のお金が作れるから、委託販売を止められないのだ。
しかし、新しく取次と取引を始めた新規の出版社には一切そのような特典はなく、新刊委託本の代金は半年後に清算される。
取次は、書店に対する配本と集金に関しては大手を優遇し中小には厳しい傾向があるが、出版社に対しては老舗と新参に分けて老舗の出版社を優遇しているのである。
まあ、二大取次の株主は、老舗出版社なんだから、あたり前。早く言えば、そうした株主出版社の自転車操業のために、業界があるようなものとも言える。瀕死のご老体の延命を業界全体に強要しているというか。弊社が直取引をしている一番の理由。
④凡庸な編集者とそれを許す出版経営の責任
そうそう! 私が一番強調しているのは、これ。
原因を取次寡占、書店大量閉鎖などに求めるのはおかしい。日本の出版流通システムは改善されつつあり、しかも大型店が増えているため、書店の売場面積は広がってきている。
むしろ、大事な問題の1つは作り手側にある。これだけ取次に優遇されていながら、良い企画、売れる本が作れない。良い著者を発掘できない。すなわち編集者の企画力の陳腐化、出版社のマーケティング力不足がまず厳しく問われるべき。
米国の2007年の書籍売上高は前年より3.2%増。ドイツは3.4%増。フランスは5%増。雑誌を含まない書籍の統計ではあるが、少なくとも欧州、米国の出版業界は、日本のように落ちっぱなしのイメージはなく、インターネット、携帯電話が普及したから本が売れないというのは、国際的視野から見れば嘘。
さて、弊社だって、売れる本がいつも作れているわけではないし、編集者のすべてが現時点で、優れた企画力、発掘力を持っているわけではない。ちょっと油断するだけで、他社で売れた企画、売れた著者に傾いたり、自分から企画も新人著者も探しに行こうとしないで、向こうから来る人、紹介された人をさばくのが、売れてる会社の編集者だみたいな勘違いにいってしまいがち。わたしだって、そうならないとは限らない。
でも、他社より少しだけ誇れるのは、「取次による優遇がない」こと。
それから、まだまだ、ディスカヴァーのことなんて知らない著者候補の方が多いこと。
そして、書店員さんや書店グループによっては、大手老舗版元の営業や取次さんには、へいこらしても、その分の鬱憤を、弊社の若い営業スタッフにまき散らしたりする人もいるってこと。
つまり、既得権のない分、つねに、コンテンツクリエイト、マーケティングクリエイトをしていかないと、生き残れない。そういう緊張感がある。
つまり、ディスカヴァーは新参の中小出版社である、という、この業界における
弱みこそが、むしろ、強み
なのだ。だって、この業界の現在のあり方そのものが問われているんですからね。
正直に言おう。わたしは、他社のまねっこ企画と、編プロやライターさん任せの編集しかできない、あるいは、偉い先生の原稿を右から左へ回すしかできない編集者は、業界に不要だと思う。かれらの雇用を守るために、売れないのを承知で新刊の数あわせと押し込み納品の自転車操業を続ける出版社は、淘汰されるほうが世の中のためになる。
もちろん、そんなこと言って、おまえの会社はどうなんだ、といわれたら、そうならないようにこれからますます全社一丸となって、志を持って、やっていく、としか言いようがない。
編集もそうだが、弊社が直取引だということは、営業が会社の要だということだ。数の上でも、社員の過半数を占めるし、発言力でも(ま、営業には声が大きく華やかな雰囲気の者が多いのに対し、編集はその真逆なタイプが多いだけだったりもするが!?)勝っていたりする。常に目は、書店さんとその先の読者の方に向いている。自然に会社はマーケティング志向となる。
それでも淘汰されるとしたら、それもまた仕方のないことだろう。
決定権は、取次でもなく、書店でもなく、著者でもなく、エンドユーザーである読者の方にあるはずだと思うので。
なお、2大取次の株主は、どこかを、ウィキペディアで調べてみた。「続き」をどうぞ。