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2009年5月14日 (木)

「グーグル和解問題」、どこが問題か? ●干場

業界の話題ついでに、月曜日に参加した勉強会のお話を。
いま業界を揺るがす(というか、たいして揺るがされていないところが問題の!?)『グーグル和解問題』!
出版ビジネススクール主催で、講師は、新潮社法務対策室 弁護士の村瀬拓男氏。
先日、わたしも講演させていただいた場だが、わたしの緩い話とは比べようもない、なんともリッチで知的な内容だった!)

グーグル和解問題とは?

グーグル和解問題と何かというと(ご存知の方も多いと思いますが)、そもそもグーグルが、全米の図書館にある本700万冊をすでにスキャンし、有料で閲覧できるようにすると言い出したのが発端。これに対し、そんなこと、勝手にやるのはけしからん! 著作権を何と心得る!と、出版権をもつ出版社と著者が集団訴訟。
結局、次のような和解案で和解にいたりました。

1 絶版となった(流通していない)本のみを表示対象とする。
2   出版権利者は、デジタル化を許諾しない、あるいは、削除するよう求めることができる。その場合、迷惑料みたいなものが1冊あたり60ドル、グーグルから支払われる。
3 有料で閲覧された場合は、第三者機関を通じて、売上のうちの60%近くがが支払われる

ほんとうはもっといろいろ細かいのですが(和解案の正式書類は、百数十ページに及ぶそうですから)、ざっくりいえば、まあ、こんなところ。

なぜ日本も大あわてか?

アメリカでのことなのに、なぜ、日本にも関係あるかといったら、アメリカの図書館にも日本の本はいっぱいあるし、翻訳されているものだったら原著者としての権利もある。そして、ベルヌ条約(国際的な著者区件保護条約)と、クラス・アクションの適応で、アメリカでの和解案が、立場を同じくする他の国々にも適応されることになったから(←頼んでないのに!!)。

さらに、絶版本ならいいじゃないか、と思ったら、その定義が問題で、要は、アメリカ国内で入手が容易か否か、簡単に入手できないものは絶版と見なされるという。となると、日本の本は、ほとんどがグーグルのいう「絶版本」になってしまう!

つまり、黙っていると、知らないうちに、自分の本、自分の会社の本が、勝手にスキャンされ、有料で閲覧される可能性がある、ということ。

最初、すでにスキャンしてしまったものは、和解案を受け入れたうえで、5月6日(だったか)までに申し出れば、削除する、和解案を受け入れないか、申し出がなければそのまま、みたいなことが、3月だったか4月だったか、ほとんど時間のないうちに発表されたものだから大あわて。でも、9月に延長されて、少し息をつき、書協や大手出版社を中心に、対応が話し合われている。

和解案のどこが問題か?

もちろん、グーグルがスキャンして、世界の人々に、コンテンツが役立つ形にしてくれて、しかも閲覧料の一部もくれるというのだから、いいじゃないか、という考え方もあるだろう。読者の立場だったら、これほど便利なことはない。

でも、

そうした「実」よりは、そもそも、著作権者に無断でスキャンしてコンテンツを自分の所に事実上、独占的に集積し、そして、売る、ということに、たとえそれが、知の共有という高邁な理想から始まったものだとしても、違和感を感じる、というのがみなの思いじゃないだろうか? 資本とインフラに物言わせて、やったモン勝ち、早いモン勝ちみたいで。

だからこそ、アメリカでは訴訟になった。もちろん、ただでさえ、他者のマネした物(本)作りと、人のものを右から左に回す商売の嫌いなわたしは、納得しがたい。

実際、弊社のものは、まだスキャンされているものはないようだし、あったとしても、実のところ、利用されるかどうかはかなりビミョーなのだけれど、それ以前に、コンテンツを無断で、というところが、正直、理解できないのだ。

さらに、アメリカの本以外は、ほとんどが絶版本じゃないのに絶版本扱いになってしまう(そりゃ、いくら日本でベストセラーの勝間さんの本だって、アメリカでは限られた日系書店でしか入手できない)のって、どういうこと? そこだけ変えられないの? あまりにアメリカ中心主義じゃない? そもそも事情が異なるのに、クラスアクションを適応するのがおかしくない?

しかも、自分で、調べて削除なりをお願いしないといけないことになっている。どうして、勝手にやってる側に、「お願い」しなければならないわけ!!?  

●日本はこのままでいいの?

でも、これら以上に、納得できないのは、日本の国としての対応。

以上のことは、日本に限らず、他の国々についても言えることなので、他国はどうしようとしているのかと、村瀬氏にお聞きしたら、フランスは真っ先に集団訴訟を準備しているとか(さすが、フランスです!)。ドイツにもその動きがあるとか!

これに対し、日本でも、谷川俊太郎さんなどが属する日本ビジュアル著作権協会など、一部に、闘い姿勢を見せているグループもあるものの、この件については、 大手出版社の方々が、さっそく文化庁に、国としての力添えを依頼したところ、軽くスルーされたという話を別の出版社の方から聞いた。でも、これって、最初の始まりだと思う、あらたなコンテンツコントロール合戦の。グーグルの問題にとどまらない予感を感じるのは、わたしだけ? 

ところで、わたしが、「理屈」が合わないと息巻いていたら、「1者で訴訟を起こしたっていいんですよ、ご自由に」みたいなことを言われてしまった が、アメリカでは、結局、弁護士が、グーグルから3000万ドル、原告側から1500万ドル、合わせて45億円せしめたとか。……すみません、無理です、 わが社には…。

なので、その後も、対応のための勉強会を続けていらっしゃるという主要大手出版社の方々、よろしくお願い申し上げます…!?

PS  ところで、わが国では、国会図書館の蔵書(すべての出版物は、納品するよう義務づけられている)が、出版権者、著者への許諾なしに、電子データ化できる、という法律がひっそりと(?)国会を通ったらしい。
もし、全国の図書館に広がって、将来、電子データでの貸し出しができるようになったら? こちらは、本の売上げ、著作権者の生活の保護にまで及ぶ大問題となりそうだという指摘が、講演者よりありました。

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「グーグル和解問題」、どこが問題か? ●干場を参照しているブログ:

» 紙の本が90%亡くなって欲しいと弾言したくもなる、たった一つの理由 (404 Blog Not Found)
私もまた、この発言を眠たいものと感じた。 「紙の本は電子書籍に駆逐されない」と出版社CEO - ITmedia News 「(紙の書籍が)こうした新しい選択肢に完全に取って代わられることはないだろう。両方のモデルがある程度統合されることになるのではないだろうか」とMondadori...... [続きを読む]

コメント

この問題の背景として、アメリカと日本で「情報」や「コンテンツ」のデジタル化について、意識が全然違ってきているということを直視する必要があるのではないでしょうか?

たとえば、アメリカの大学で勉強していると、オンラインで論文検索をしながら参考文献をダウンロードして調べ物をすることができます。その利便性たるや凄まじいものがあり、日本で図書館や書店を回って文献を集めるのとは比べ物にならないほど効率的ですし、成果物にも差が生じるように思います。知的な営みのインフラ部分で、彼我の差は非常に大きくなりつつあります。

そして、このグーグルの和解は、アメリカ国内で著作物をどう取り扱うかという、まさにアメリカ国内法の問題ですよね。ですから、アメリカ人が個々の権利者の保護よりも情報の知的インフラとしての側面を重視してこの問題の結論を出したとしても、それは彼らの価値観の問題ではないでしょうか。私たちがアメリカ中心主義と批判するのはピントがずれているように感じます。アメリカのみならず全世界にダウンロードさせてあげよう、という話ではないのですから。むしろ、日本の著作権法の考え方をアメリカ国内に強制したいという発想の方が、やや奇妙ともいえるのではないでしょうか。

もちろん「絶版」の定義(慣習的伝統的な方法で商業的に入手可能かどうか)は、アメリカ国内からであっても日本の書籍をインターネットを通じてアマゾン・ジャパンや紀伊国屋に注文可能という現状を無視しているので、私も不合理であると思います。

しかし、ここが違っていたら、どうでしょう?この問題の本質はアメリカによる「黒船」でもなんでもなくて、日本でも、個々の著作権者の保護よりも情報の知的インフラとしての側面を重視すべきと考える人が増えた場合にどうなるのだろうか、という純粋に日本国内の問題になるのではないでしょうか。ですので、この問題を黒船として捉えると一番、重要なポイントを見失ってしまうような気がします。

もう少し進歩的な方だと思っていたので、読者の視点があまりに足りなすぎるこの記事を読んでとても残念に思いました。
再販価格維持を許されるなど他業種に比べ、歪なまでの特権を得ている以上、まず第一に公共性、読者の利益を最優先に考え、動くべきだと思います。
出版社のために読者が居るのではなく、読者のために出版社があるのです。
こうした、根本的な勘違い、傲慢さが出版業界に蔓延しているのであれば、丸ごとgoogleやamazonに「ぶっ壊して」もらうのも日本のためには悪くないのかな、とさえ感じてしまいます。

dcさんへ
何か、それこそ、根本的な誤解があると思うのですが……
 出版社は、著者と読者をつなぐものです。そういう意味で、コンテンツメイカーであり、現在の本という携帯の中では、コンテンツディストリビューターです(正確には、取次と書店がその部分を担っていますが)。

 コンテンツに価値を見いだすのなら、それを生み出した人へのお礼として、そして、そういう人を育成するためにも、なにがしかの対価をわたすべきだとはおもいませんか? 
 それとも、すべて無料にすべきだとお考えなのですか?
 でも、心配なのは、それでは、コンテンツを生み出す人がいなくなってしまうのではないかということ。
 
 あるいは、そもそも公開するのを止めて、結局、ごく一部の人だけに、提供するようになってはしまわないでしょうか?(すでに一部でおこっているとも聞きます)

 結局、グーグルも、コンテンツの価値を認めて、コンテンツソースに、払うことにしたわけですし…。

 日本にこれから残るのは、広い意味でのコンテンツだと思います。確かに、儲けるのは、その受け皿の仕組みを作る側でしょうが、でも、仕組みだけあっても、中身がないとしたら?
 その中身(コンテンツ)を、大事にしていかないと、そだたないだけでなく、基本的なところで、その大事さを知っている外国に、浮世絵みたいに持って行かれてしまうだけだったりして!?

 わたしが怒りを感じるのは、出版社がやばくなるからとかそういうことではなくて、コンテンツを生み出す人に対する軽視に対して、です。

 おいしいお料理を食べさせていただきながら、料理人への敬意もなく、あわよくばただで食べちゃおうか、それどころか、ただでいただいたものを、別の人に、売っちゃおうとか、そういうことに対してです。

 ただ、おっしゃるとおり、そして、弾さんもかいているとおり、出版を現在のみの形にこだわっていては、出版社は不要になるでしょう。読者にとっても著者にとっても不要の存在となるでしょう。

 著者と読者をつなぐのが出版社と取次、書店の仕事なら、その仕事をこのままの流れで行けば、グーグルやアマゾンが担うことになるでしょう。最初は、人のつくったものを、あわよくばただで使おうとしていただけだとしても、いずれ、自分たちで、つくるようになるでしょう。
 そういう意味では、たしかに、既得権を守るような立場だけで怒るのは、大いに勘違いでしょう。

 なので、この先、何もしないで今の形での出版にこだわるような会社は、私もいらないと思います。おっしゃるとおり、紙と印刷技術と共に歩んできた出版は、その長い長い使命を終えるのです(ごく一部は、「モノ」としての価値として残るとしても)

 でも、その「仕組み」がどうあれ、コンテンツは常に必要です。知や情報をシェアし合う、その知や情報そのものは。
その発見と育成と発表と選択が、編集なのでしょうが、その機能は、なんらかの形で必要となるでしょう。その意味で、ディスカヴァーは、コンテンツメイカーとして、世の中に、必要である限り、機能していきたいし、必要とされる形を見つけていきたいと思っています。今は具体的には言えませんが。

 もちろん世界中の人が、いや、21世紀の「出版社」はグーグルとアマゾンの2社だけでいいのだ、と、そう思うのだとしたら、まあ、しかたないので、別のもっとおもしろいこと、始めようかな?

 興味深く拝見しました。今回、日本文藝家協会が、グーグル和解案を積極的支持する方針に転換を図ったと報じられており、冷静な議論をする環境ができつつあると感じています。
 少々観点が異なるかもしれませんが、感じていることを書いています。よろしければ、お読みいただければ幸いです。著作者への還元を増やすことは、大賛成です。作家の皆さんあっての文藝文化ですから・・・。


●文芸家協会、グーグル和解案積極支持へ方針を大転換!
  http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt/53329213.html 

●グーグル和解案が作家への強力な援軍に?!  
  http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt/53370574.html 

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*PROFILE*

  • 干場弓子
    ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長。魚座。愛知県立旭丘高校、お茶の水女子大学文教育学部卒業。新卒時、世界文化社入社。「家庭画報」編集部等を経て、1984年、ディスカヴァー・トゥエンティワン設立に参画し、現在に至る。夫と息子との3人暮らし。好きな言葉は、「Tomorrow is Another Day」。スカーレットの言葉です。理想の男性は、レット・バトラー。もしくは、クラーク・ケント(スーパーマン)。夫は、どちらにも、似ていない。
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